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まちおこし[3位]
歌舞伎町に立ち始めてから今年で17年。生活費を得るべく始めたティッシュ配りをする傍ら、より多くの稼ぎが見込める「ガイド」ビジネスを考えつきました。どうして歌舞伎町なのか、そしてガイドというビジネスについて語って頂きます。
―― 日本で働くと決め、なぜ歌舞伎町を選ばれたのですか?
歌舞伎町が汚い街だったから。外国人でも働ける土地だったからです。
来日するとき、50万円相当のお金を持ってきました。中国の物価と制度を基準に考えたとき、これで1年間は優に暮らせるだろうと見越していたのです。けど、実際は1週間でなくなってしまいました。アパートを借りるのに、日本では頭金が必要だったんですね。
―― 中国には頭金制度ないんですか?
ないないないない。契約の段階で、家賃の何ヶ月分にもあたる礼金・敷金セットを払うのは日本しかないですよ。
で、その予想外の頭金と学費の3ヶ月分を払ったら、1週間で貯金が底をついたんです。だからなんでもいいから働いてお金を手に入れないとならなかったんですよ。
今でも覚えていますが、当時の歌舞伎町はまっすぐ歩くことができないほど多くの人が入り乱れ混沌としていました。その様子を見て、ここなら日本語を知らない外国人でも働き口がみつかるんじゃないかと感じ取ったのです。だから最初は、必要に迫られ歌舞伎町での生活が始りました。
―― どんなアルバイトをされたのですか?
ホテルの清掃や皿洗い、それにダンサーもやりました。当時は犯罪でなければ、身体を売ることだって抵抗はありませんでしたよ。来たばかりの頃、ホストクラブをそういう場所だと思い、面接も受けに行きました。日本語をしゃべれない私は、まったく相手にしてもらえなかったんですがね。
そうして最後に就いたバイトがティッシュ配りです。このアルバイトを始めたお陰で、より効果的に稼ぎだせる「ガイド」というスタイルに私は出会うことになりました。
―― より効果的とは?
私が歌舞伎町で商売を始めた1988年(バブル経済期)当時、訪れるアジア系外国人も少なくなかったのですが、彼らを案内できる人がこの街にはいませんでした。勿論、路上に立つ中国人なんて私くらいです。
すると彼ら、私を目にするや否や、「いい店知らないか」と声を掛けてくるんです。ちょっと指差して教えただけで1,000円渡されることも。1時間立ってティッシュを配り貰える1,000円がものの数秒で手に入ったんです。そういったことが何度か続き、「これは!」と、自分からも声を掛けるようになりました。ティッシュ配りを始めて3ヶ月が過ぎたとき、私は外国人向けのガイドを専業に始めることにしたのです。
―― ガイド専業になった頃の収入は?
すべてチップです。だからチップを知らない人を案内したらノーギャラ。そんな時は、「御願いです、チップください」って頼み込みましたよ。でも運がいいときは、1万円札をくれる人もいたから、ガイドをするときは毎回真剣でした。
―― 現在、李さんにガイドを御願いした場合、いくら必要となりますか?
ゼロ円です。バックチャージ契約のもと、お店から貰えるお金がガイド料になりますから。
―― バックチャージというのは?
私が契約を結んでいるお店へお客さんを連れて行くことで、お店から私へ、その売上の一部が支払われるシステムです。
―― お店としても営業せずにお客を呼び込めるから、いくらか支払ったってプラスになり、歓迎されるわけですね。
はい。今では風俗の無料案内所がありますが、あの頃、店のキャッチはいても、どこにも属さないガイドは珍しかった。それに私は中国人です。本土からの旅行者に対しては母国語で声を掛けれ、彼らの要望も細かく聞いて案内できます。
―― 特に前例もなく、さらに日本に来てまもない李さんが一体どうやってそのノウハウを見出したのですか?
東京タワーです。
あるとき、中国からの団体旅行客を東京タワーへ連れて行ったことがあったのです。受付で私がガイドと名乗ると、「後で来て」と言われて、一人あたり500円の入場料のうち200円を人数分もらえたのです。自分もタダでタワーに上れて、お金も貰えて、日本にはこういうやり方があったんだって、新たなビジネススタイルがひらめきました。
―― 偶然の出来事が李さんのビジネスへとつながったと?
そうですね。日本の慣習を知り、歌舞伎町に空いていた「対外国人ビジネス」という穴に気づき掴んだものです。中国人が日本にイメージすることや、歌舞伎町に来る理由を熟知していたので、バックチャージ契約をするお店も的を得ることができたと思います。
―― 中国人が歌舞伎町に来る理由とは?
日本語のわからない中国人が歌舞伎町に来て楽しみたいことは、もちろん会話ではありません。性に対して閉ざされた中国から来て、わざわざ歌舞伎町に足を運ぶ理由は限られています。その要望に沿ったお店のなかで、外国人もOKで、自分が体験して、ここならと選んだお店へ私は案内するのです。
―― あっ。確かに、そうですね。高いお金払って、言葉の分からないなか接待されても…。
現在の歌舞伎町で営業している風俗店は、警察の取り締まりが厳しくなり、10年前と比べて3分の2まで減っちゃいました。
―― それは、普段、李さんが案内されるお店の類のことですか?
えぇ。ほとんどのお店が無許可で営業していたので。
身体に接触したり、ストリップなど肌を出す業種は、今の時代では許可が下りません。歌舞伎町の中で営業許可を受けている劇場などは、数える程です。私も商売を始めたいですが、絶対に許可されないから、できません。外国人が集まるだけですからね。
―― 外国人が集まるというのは、李さんがオーナーになるからですか?
いえいえ。今のストリップ劇場がそうだからです。よっぽど有名な女優が出演しない限り、日本人のお客さんは並ばないんです。夜の場合は、多くが外国人観光客ですよ。
―― そうなんですか。法の規制といえば、2005年4月1日に迷惑防止条例(※)が改定され、キャッチなどへの取り締まりが厳しくなったといわれていますよね?
(※公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例)
まず、石原都知事が就任してから、外国人組織犯罪に対する特殊部隊がつくられ、中国人マフィアや不良グループが姿を見せなくなりました。各所に置かれた防犯カメラもそうだし、緑も増えて、犯罪が起こりにくい街になってきたと思います。 キャッチに関しては、みんな抜け道を探しつつ、カムフラージュしながら営業していますね。ホウキを持って掃除をしているフリして声掛けたりね。
―― 李さんの仕事で何か変化はありましたか?
特に変わってないし、むしろ悪い奴らが減って働き易くなりました。今は学生のアルバイトだって、4、5人雇ってやっています。だって、通訳して案内するんですよ。キャッチとは大きな違いがあります。
それに私の場合、個人ではなく、ちゃんと会社があり、ガイドをひとつの業務として申請しています。もちろん悪いことをしたら捕まっちゃうから、警察だって私を野放しにはしていません。
―― なるほど。では、無料案内所の様子はどうでしょう?そこにも警察の手が入っていると聞きましたが。
もちろんチェックされています。無許可のお店のチラシなどを置いたら、そのお店は捕まりますよ。
―― では、優良店のみが登録されているということですか?
優良店かどうかはわからない。ただ、許可されているお店です。
―― では、法外な料金を請求するお店などもあるかもしれないということですか?
この業界は水ものですからね。お酒だけを飲みたかったら居酒屋へ行けばずっと安く飲めるでしょう。色気やおしゃべりを買う商売だから、金額には、お客との駆け引きも入りますよ。
―― 一筋縄では行かない世界ですね…。
ええ。お店の外観だけで判断はできません。実際に入ってみないと、私でも分からないです。だから私も自分で体験し、いいと思ったお店に限りバックマージンの契約を結びます。
―― 素人判断は禁物ですね。では最後に、李さんにとって歌舞伎町とは?
やっぱ、大好き。私の彼女。愛しているね。
名代 後楽そば
(めいだい こうらくそば)
うどん・そばの他、ラーメンにやきそばと、麺ものなら一通り食べられる「後楽そば」。
厨房を中心に、クルッとカウンターが囲む店内。
「母の作るラーメンの味」に近く、生活費もままならなかった頃、特に足しげく通った立ち食い蕎麦屋。 『歌舞伎町案内人』でも多くその名が度々登場しましたが、李さんが決まって注文する品が「肉ラーメン」。この界隈で食べられるラーメンの中では一番であると、今でも一人の時は、ふらり立ち寄り食べているそうです。
名代 後楽そば
住所
:
新宿区歌舞伎町1-14-5
第3金嶋ビル1F
[地図をみる]
電話番号
:
03-3209-5585
営業時間
:
24時間営業
交通手段
:
「新宿」駅東口からコマ劇場に向かって徒歩5分
Menu
:
肉ラーメン 520円
肉そば 430円
3色定食 490円
なにわ天ぷら 420円
李 小牧(リーシャム)
氏
▲ ルノアール新宿コマ劇場前店にて
1960年 中国湖南省長沙市生まれ
88年2月に語学留学生として来日し、翌年4月から4年間、東京モード学園にてファッションの勉強を行う。学生生活に並行して、学費、生活費をまかなうため、外国人観光客を歌舞伎町のお店へ案内するという、通訳兼ガイドを始める。
学園卒業後は、ガイドを主幹ビジネスにおき、その傍らで中国のファッション誌「時装」の日本記者とし、ファッションジャーナリストとしても活躍。
2002年8月、日本の社会を歌舞伎町を舞台に表現した「
歌舞伎町案内人
」を皮切りに、ドキュメンタリー作家という頭角も現す。なお、歌舞伎町ガイドビジネスは現役である。
演劇系や文学系など独特の個性を醸すお店が多く軒を連ねるゴールデン街。隠れ家のようで不思議な佇まいをしています。
ゴールデン街でも古くから続くお店
「しの」
の店内。若者もビジネスマンも一体となって賑わいをみせます。
駅前
「百果園」
で売られるカットフルーツにかぶりつく李さん。中国ではごくごく一般的で、観光客に案内すると喜ばれるそう。
区役所通りを歩いていたとき声を掛けてきたアメリカ人と固い握手を。国籍問わず人脈の多さを物語っています。
「応援しているよ」と街行く人にエールを送られ、笑顔を向ける李さん。
存在がキャッチーな彼女たちの手には、条例をすり抜けるべくホウキやぽい捨て禁止のポスターが。ある種オープンなキャッチを前に、ついこちらから声を掛けてしまいそう。
ガイドのアルバイトをしている学生もまた、仕事着にはYシャツとスラックスを。
歌舞伎町に設置された防犯カメラのひとつ。
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この街あの人! 李 小牧(リーシャム) 氏
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