縁
「早く働きたい」、「社会に出たい」。中学時代から社会に興味をもち、働く意欲が止まなかった藤田志穂さん。一方、自分らしさを表現してくれる、いわゆるギャルというファッションには、ガッチガチの悪いレッテルがつきまとい、まるで社会のはみ出し者のような扱いを受けることも。その偏見を打ち破り、世間のギャルへの見かたを改めたいと起こした行動とは?
ギャルの本当〜私を知って〜
―― ギャルって、何がどう違うのでしょうか?
ギャルの定義って、すごく難しいですよね。実際、渋谷系、袋系(池袋の略)、B系、その他ジャンルも分かれているけど、着ている服やメイクなど、見ためを基準に世間がひとくくりにした総称がギャルじゃないですか。
―― どんな服やメイクになりますか?
派手で、露出が多いファッションに、ナチュラルというより、主張するメイク。ギャルのファッションの基本にあるのは、やっぱり注目されることで、ギャルと呼ばれる子たちの多くは、自分を知ってもらいたかったり、人と違う自分でありたいと願う子です。
―― 目立ちたがり屋な子が多いということですか?
埋もれてしまいたくないというか、目に入らない人間になりたくないし、大人たちに言われるままに従って個性を潰したくない、そんな思いが強いんです。 渋谷を歩いていても、多くの人は風景のように通り過ぎていくじゃないですか。精一杯、自分をアピールしないと、誰も気づいてくれない、そんな気持ちもどこかにあり、あと、もちろん、ギャルのファッションやメイクがみんな好きなんです。友だち同士、服を交換したりするのも楽しいし。
ギャルサークル〜ミニ会社〜
―― 服を交換したりもするのですか?
ギャルの特徴のもうひとつは、たぶん集団が好きなところ。
みんな色々なサークルを立ち上げていて、サークル毎で、イベントを行ったり、サークル同士の交流会もよく開かれていますよ。

―― イベントですか?
はい。自分たちを分かってもらうために発せられるエネルギーは計り知れないです。
何かを興すために必要とされるスキル、例えば、スポンサーを得るために、パワーポイントを覚えて資料を作ったり、集客するために必要なデータ分析や管理をエクセルで行ったり、もちろんワードだって、サークルに参加する中学生や高校生の子たちみんな使えますよ。
イベントを行うためのフライヤーなどのちらしも自分たちで作って、それをお店に営業して置いてもらったり。イベント会場や、チケットの手配も、みんなでやっています。

―― ある意味、会社ですね。
そうですね。サークルそれぞれが、小さな組織になっています。みんなを引っ張るリーダーがいて、営業が得意な子や数字に強い子が、それぞれの個性に合った役割で、同じ目標に向かって成し遂げていく。何も知らなかった子も、活動を進めるうちに必要なスキルが自然と身に付いていくのです。
自分でつくる縁〜人は怖くない〜
―― 渋谷は藤田さんにとってどんな街ですか?
渋谷によく来るようになったのは、高校生の頃です。ここに来れば、とりあえず誰かいるし、買い物や、遊びと、興味をひくものが揃っている、そんなイメージです。

それから、多くの人は渋谷は人が多くてごちゃごちゃしているから、疲れたり、ストレスを感じると思うのですが、私の場合、それが居心地よくて。変にまとまっていないところが好きなんです。

―― とりあえず“誰か”というのは、ギャル仲間のことですか?
そうですね。ギャル以外の友だちもいますが、ギャルスタイルが好きな子が多いです。あと、その場で友だちになったりも。

―― 突然友達に?
センター街とか歩いていて、いいなって思う服や、気になっていた物を持っている子をみつけたら、「ねー、ねー、ね、それ何処で買ったの?」とか、フランクに声をかけて、そこから友だちになったり。

―― 奔放ですね。
私、知らないことは知りたいし、知っている人がいたら、自分から訊きにいきます。素直さを持っていれば、始めは難しい顔を向ける人も、話を続けるうちに、きっと応えてくれるので。人って知らないと疑うし、警戒もするけど、だからこそ、自分から隠さず心を開いて話せば、通じ合ったときに、熱いつながりが生まれると思うんです。

この考えは、会社を興した今も大切だと実感していることですが、話さないと分からないし、ちゃんと伝えないと伝わらない。なんとなくでなく、ちゃんとつながりたいなら、やっぱり自分から相手に伝えていかないといけないって、日々、色々な人と話す機会があるたびに感じます。
全力疾走〜会社ができるまで〜
―― 会社を興す前、藤田さんはどんな日々を送っていらっしゃいましたか?
中学時代から、「早く社会に出たい。働きたい」という思いが強くあって、義務教育が終わったら、本当は高校も行かずに働こうと考えていました。

―― 中学生といえば、13・14歳。その頃から働きたいと?
はい。けど、父の反対を受けて断念。中卒であることで、先々に訪れるだろう私の苦労を父が心配してくれたんですね。「せめて高校までは行って欲しい」と切実に訴えられました。なので私も、高校までは娘とし、父の意志を尊重した生き方をしようと決めて、結局、学生時代を無遅刻無欠席で過ごしたんです。

―― やると決めたら真剣なんですね。
なんでも全力です。この頃から、バイトも始めたのですが、ただ目の前にある自分にできることを、全力で取り組みました。

―― 全力で?
やりたいことを貫くために、抜けをつくっちゃいけないって、思ったんです。大人たちが期待することや、要求すことも精一杯やれば、何もしないで訴えるよりもずっと説得力が上がりますよね。一方通行にやりたいことだけを言っても、それはわがままだからと、誰も聞き入れてくれないし、自分も腐っちゃいそうで怖いし。だから、やるべきことをやった上で、自分を表現してきました。

―― 学校以外の時間はどう過ごしましたか?
渋谷に出てきて友だちと遊んだり、イベントやったり、アルバイトも色々やりました。在学中は「運送会社」と「飲食店」でのバイトを中心に、ティッシュ配りなんかも。卒業してからは、運送会社での事務を続ける一方、「モデル」の仕事も日常を占めるようになりました。

―― 高校を卒業するとき、就職することは考えませんでしたか?
当時、美容に興味があって、特にネイルを覚えたいと、美容専門学校へ行くことも考えたんですが、「まだ自分はいい」と、バイトをしながらモデルの仕事を続けました。自分に何ができて、何をやりたいか、強く惹かれるものに出会いたかったんです。あの頃はただ、バイトを半端なくやって、いろんな場所にも顔を出して、目の前のことに一生懸命でした。

―― 最終的にたどり着いたのが起業ということですか?
会社を興すという考えは、会社という形が、社会に正式に認められる表現の手段であると、働きながら感じ取ったからです。具体的な何かを始めたいから、会社をつくろうとしたのではなく、私の場合、何かを始める土台が欲しいと思い、起業しました。
―― やりたいことは始まりましたか?
はい。今はアイディアが溢れて止まない感じです。
【処】街のあの人がお勧めするとっておきのスポットをご紹介!
宮下公園  (みやしたこうえん)
渋谷駅ハチ公口から宮益坂に向かうトンネルを抜けた公園の入口にて。
渋谷駅から徒歩で5分で行ける、渋谷区立公園。たくさんの木々が生い茂る公園は、ちょっと疲れを感じたとき、何気なく足を運ぶ事があるという、藤田さんのお気に入りの場所。

大好きな場所だからと、毎週、決めた曜日に、朝のお決まりごととして、掃除もしています。「せめて自分が利用している場所くらい、自分にできることで役立ちたいと、30分だけだけど始めました。嬉しかったのは、それを知ったクロ団(※)の子たちが声を掛け合い、自発的に掃除を始めてくれたことです」と、今では支えも増え、人の役に立つことをみんなで行える喜びを感じてます。

今後は、清掃活動に賛同してくれる仲間と一緒に、宮下公園のみならず、渋谷区内の公園を各所巡って掃除を計画中だとか。

(※)クロ団についてはコチラ
http://www.sgr-co.net/contents/kurodan.html
宮下公園
住所 渋谷区神宮前6-20 [地図をみる]
交通手段 JR「渋谷」駅から徒歩5分
 
街の案内人プロフィール
藤田 志穂 さん

▲ WIRED CAFE 渋谷Qフロント店にて
高校時代から「ギャル」スタイルを貫き、誇れるギャルであるよう、無遅刻無欠席など、学校生活、バイト、遊び、とすべてに全力で取り組んできました。同時に、世間の大人たちのギャルに対する評価の低さや偏見をくやしく思い、ギャルでもできる、ギャルだからできることを証明しようと19歳にして、会社を興します。

現在は、従業員3名を抱え、音楽から若者向けの商品マーケティングまで、幅広い業界で活躍中。

オフィシャルサイト:
http://www.sifow.net/
連載中のブログサイト:
http://blog.livedoor.jp/sifow/
インタビュー当日。渋谷駅前にて待ち合わせ。ジーンズにシャツとカジュアルなアイテムをお洒落にまとめ、笑顔で挨拶を向ける藤田志穂さん。
ご自身がモデルで活躍しているティーン誌「JELLY」を手に、ニッコリ。
モデル仕事の撮影風景。現在はモデル業の他、雑誌の連載、テレビ出演も行い、幅広いメディアで才能を発揮されています。
渋谷の街を散策。何か新しい発見がないか、歩きながら見てまわることも仕事につながる大切な動き。
>>Vol.2「技 〜仕事の風景〜」へ



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